2001・夏・土佐のアゲハ物語
6/20
はじめまして。僕たち兄弟は10日くらい前になるかなあ〜パセリの葉陰で無事生まれました。 ここのパセリはものすご〜く美味しくて、いっぱい食べたらこんなに大きくなったよ。
〈解説〉そうなんです。一週間前はまだ2センチほどのチビちゃんだったのに梅雨時で水やりに庭へ出ることもなく、久々に覗いてみるとあまりの成長にビックリ。アゲハチョウになるんだよね?とよく分からないままその後はわくわくしながら一日に何度も見に行った。

それから2日後、2匹の兄弟は忽然と消えた。この間先住者であるトカゲが茶色のイモムシを加えて移動しているのを見た。だからまるまる太った青虫なんて美味しそうだもんね。それとも蜂に連れ去られたの?お寿司が食べれると思ったら、お茶漬けになってしまった様なショックと淋しさ・・・スミマセン変な例えで・・・。ところがそれから約1ヶ月後、同じパセリに今度は7匹のチビちゃんを発見。で、続アゲハ物語の始まりです。
8/7
私達のお母さんは子供のことを考えて今度も消毒していないこのパセリに卵を生みました。数日前、7番目の弟がかえったの。ここの家の人たちは私達を見つけるととても嬉しそうだった。そしたらアララ?鉢ごとどこかに移動。でもいいわ、パセリさえあれば。
〈解説〉そうなんです。思いがけなく今度は7匹も。で、前回の事を教訓に狭〜いけれど安全な坪庭に連れて来ました。
8/8
妹や弟達が「食べる物がなくなってきた」と元気がない。お隣のバーベナさんを味見してみたけれどチクチクしておいしくな〜い。「お母さ〜ん」
〈解説〉2,3日は持つかと思っていたのに朝起きたら茎だけになっていてビックリ。
8/8
ここのお母さんがお花やさんに「パセリの苗ありませんか?」と電話をしていたけれどなかったみたい。そして近くのスーパーで一束98円のパセリを3束も買ってきてくれた。「ありがと〜」でも鮮度やお味がちょっと違うけど辛抱ね。次の日にはお姉さんたちも一緒に違うスーパーへ。この御恩は一生忘れない・・・。でもお父さんに「一束198円だった!」とか「いつサナギになるの」と聞いていた。肩身が狭いわ。
一日の食費が600円・・・
8/10
その様な訳で私からサナギになる準備を始めることにしました。   なんて冗談ですよ!これ以上太るとサナギになった時に体を支えられなくなるから。これも冗談です・・・ゴメンナサイ。。
〈解説〉この子達が来てから家族の視線も話題もこの子達に集中です。み〜んなが朝起きると「1.2.3.4...」と7匹を確認。でもこの日6匹しかいなくて大騒ぎ。そしたら鉢の横にいました、いました。でも「色が変、生きてるの?サナギになるの?」と勝手言ってます。今までに子供達が拾ってきたり、捕まえたり、頂いたりでいろいろな生き物を飼いましたが蝶は初めてなのです。
8/11
さぁ、サナギになるわよ。
〈解説〉ふと見たら上半身がきれいな黄緑色で、よく見たら体をプルプルと小さく揺らしながら脱皮中ではありませんか。あっという間のことで、まばたきもできなかったほど?
思いがけなく虹を見たような感じでした。中2の娘は抜け殻を拾って匂いを嗅いでいた・・・信じられん。
8/14
お姉ちゃんに続け―――!
とばかりに次々サナギに変身。
中央がまだ幼虫。右のが脱皮直後。左が脱皮してから3日目。そうなんです。黄緑色のままではなく茶色に変わりました。保護色なの?それとも黒アゲハ?アゲハじゃなかったりしてと疑問だらけです。
あとの3匹は居心地のよい場所を求めてか、脱走を試みたところを娘に目撃され、割り箸に掴まってサナギになった子。脱走に成功した子。サナギになることなく死んでしまった子・・・。自然界の掟に逆らったことをしてしまった様でココロが痛い。
と言う訳で5匹がサナギになりました・・・。
8/16
「土佐の青い空へお先に〜」
パセリと脱走の心配がなくなったので、羽化は2週間後くらいかな・・・と勝手に決め込んで前ほど気に留めることなく過ごしていたら、朝息子が抜け殻のすぐ横にそっと留まっているアゲハチョウを発見。しかし私達の歓声に驚いて壁をゆっくりロッククライミングで登りつめるとあっさりお別れ。多少の名残惜しさはありましたが、やっぱりアゲハチョウだったことと無事に飛んで行ったことが嬉しかった。(1匹目)
8/17
「お姉ちゃ〜ん、ボクも一緒に連れて行って〜」
「さぁ、次は羽化の瞬間を見るぞ!」と気合いを入れ目覚まし時計で5時に起きてそっと行ってみると、「ガーン」りっぱなアゲハチョウになっていた。(2匹目)
8/18
「羽が伸ばせていい気持ち〜」
娘達と「今度は3時?」と不安げに話していると、夫が「2匹目は午前3時には羽化していたと」言うので私が2時まで見張り・・イエ観察。しかし一向に変化無しだったのでひとまず寝ることにして、6時前に起きて行ってみると、ハイ、美しいキアゲハがツンとすましていました(私にはそう見えた)。(3匹目)
8/19 午後3時
「次はボクだよーーー」
今までの経験からサナギの色が変わり始めてから約6時間後に羽化していることが分かったので、サナギの変化に気付いてから指を折って計算してみると9時には・・・(3人でニヤリ)。遅くても今日中には念願の羽化が見られるとまたしても気合いが入った。
8/19 午後8時
「・・・また移動?」
そうなの、ゴメンネ。写真やテレビでしか見たことのない羽化の瞬間を子供達に見せたいのと私も見たくて家の中へまたまた移動です。
明日は3人で以前から予定していた「千と千尋の神隠し」を観に行く日だったので1.2時間後には羽化が見られると確信し「ヨカッタネ」と言っていた頃。
8/19 午後10時
「そんなに見ないで〜」
間近で目を凝らして見ていると、時々モゾモゾと動いたりして小さな命がこんなにも嬉しいものかと思った。
8/19 午後11時半
「・・・・・・・」
羽化しない原因を考え始め、テレビを消し、照明も消した。末の娘は(羽化が始まったら起こしてあげるという事で)明日に備えておやすみ。私達はタオルケットと懐中電灯を持ち込み時々チェックしながら半睡状態で朝を迎えた「・・・・・・・」。

3人でサナギを白い目で見ながら、夫に「もしも、もしも羽化したら撮ってね」とカメラを渡し朝一番の上映に間に合うよう
8時前に出発した。眠た〜い
8/20 午後3時
「お帰りなさ〜い」

帰りの車中 「(台風が接近していたので)身の危険を感じて台風が去ってから蝶になったりして、だったらお利口〜」なんて言ってたのに、私達が台風ってこと?愛情たっぷりに見守ってきたのに裏切られたような気持ち・・・。夫が気付いたときには既に蝶になっていて、それが午前9時と聞いて更に複雑な心境。1時間ちょっとの間にこの姿・・・3人がブツブツ言うは当然ですよね。「えっ?蝶にも言い分があるって?・・・そうですね」(4匹目)
8/21
「最後はわたしよ」 

娘に捕まった子です。
大型台風接近のため玄関に避難させ、今までのことを教訓に静かな環境で様子を見ることにしました。夏休みの自由研究で観察している娘としあさってからブラスバンド部の合宿に行ってしまう娘のために「どうかそれまでには・・・」とお願いしたけれど変化なし。娘は「許さん!」と言って出掛けましたが「楽しかった〜」と帰ってきた時もサナギのままでした。
不吉な予感・・・
9/6
例え5匹目の羽化が見られなくても楽しくTHE ENDにしようと思っていたのに、私達が個々に描いていたシナリオにはない現実に困惑しています。
小6の娘は今までの記録と羽化の想像図を模造紙にまとめて9/1に学校へ持って行きました。中2の娘は「どうなってるか見てみようか」って。信じられん。
7匹に食べ尽くされたパセリはいつの間にか美味しそうにはびこってアゲハ物語part3が始まったりして。イエイエ例え青虫を発見しても今度はそっと見守ることにします。「それがいいわね」「ん?だれか何か言った?」
                      *THE END*